研究課題
基盤研究(C)
分化能と自己複製能を有する未分化細胞である幹細胞が成体の多くの臓器に存在する事が明らかになってきている。最近、固形癌においても癌幹細胞の存在が明らかになり、幹細胞発現遺伝子の発現異常により腫瘍が発生することが証明された。我々は、生殖幹細胞を含む精原細胞の蓄積しているJSDマウス精巣と精原細胞が殆ど存在しないW/Wvマウス精巣とのサブトラクションにより、精原細胞特異的に発現している機能未知遺伝子PTP-Xを単離した。PTP-Xは正常組織の発生過程おいて常に発現しているだけでなく生殖癌細胞株でも発現していた。そこで、遺伝子を標的とした生殖器腫瘍に対する治療法の開発への基盤を築くために、遺伝子の発現調節と機能を解析した。PTP-Xの発現解析はヌードマウス由来の精巣腫瘍組織、NEC8,NEC14の精巣腫瘍細胞株と正常マウス精巣組織とを比較した。RT-PCR, Northern分析による発現量、スプライシングの異常について解析したが、正常と癌での違いは認められなかった。機能解析はin vitro, in vivoでPTP-XのsiRNAによる発現抑制細胞、個体をコントロールと比較した。siRNA導入ES細胞をgermcell系列へ分化させ、コントロールと遺伝子抑制細胞との間での遺伝子発現解析を行った結果、精原細胞から精母細胞で発現している遺伝子の発現量には差がみられなかったが、精子細胞発現遺伝子の発現量はノックダウン細胞では明らか低下していた。in vivoの系では得られた雄キメラマウス1個体から生後14週で精巣の凍結切片を作製し、分化段階特異的な抗体を用いて免疫染色を行った。その結果、PTP-Xノックダウンマウス由来の精巣では、GATA-1陽性セルトリ細胞は精細管周辺部に存在したが、Dmc1,SCP1陽性の減数分裂期の細胞は精細管内腔近傍に存在していた点と間質細胞の多い点がコントロールとは異なっていた。In vitro, in vivoの結果からPTP-Xは精子形成の分化に関与していることが示唆された。
すべて 2006
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ページ: 904-915
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