研究課題
基盤研究(C)
本年度はアトピー性角結膜炎(AKC)を有する症例18例36眼の涙液機能、眼表面の状態ならびにムチン5及び16の変化を調べ、コンタクトレンズ装用、全身疾患眼疾患を認めない14例28眼の正常群と比較検討を行った。対象症例に角膜知覚検査、シルマーテスト弟1法、涙液層破壊時間(BUT)、生体染色、細胞診いわゆる結膜impression cytology(IC)ならびにbrush cytology(BC)を施行した。BCで得られた細胞にReal time PCRを行い、MUC5ACならびにMUC16mRNAの発現を調べた。AKC例では正常例に比較して、角膜知覚の低下、BUTの短縮、生体染色スコアーの増加が見られた。BCではAKC症例に炎症細胞の増加が認められた。AKC例のICで結膜上皮の角化の亢進、杯細胞密度の低下が認められた。ICにおける免疫染色ではMUC5ACおよびMUC16の染色が陽性であり、Real Time PCRではMUC16のmRNAの発現は正常人に比べ有意に増加していた。またMUC5ACのmRNAの発現量は正常人に比較して有意に減少していた。アトピー性角結膜炎における眼表面の上皮障害にMUC5ACおよびMUC16mRNAの変動が関与していると思われた。MUC5ACは眼表面結膜杯細胞由来のもので涙液の安定性に欠かせないものである。杯細胞が炎症に非常に敏感な細胞で炎症とともに消失することが報告されている。AKCによる炎症の影響で杯細胞が消失し、MUC5ACの発現も同時に減りBUT短縮型のドライアイが生じる。涙液の安定性と眼表面の健康を保ためにMUC16が大量に分泌されたと思われる。
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