研究概要 |
先天性胆道拡張症・膵胆管合流異常の腹痛や黄疸などの症状は,protein plugの形成により共通管が閉塞して生ずると考えられる。Protein plugの形成機序の解明により,症状の消失や症状を予防する方法の開発が可能となる。この形成機序解明のため,protein plugのプロテオーム解析を試みた。拡張症の3患児(1,3,3歳女児)から得られたprotein plug(総胆管から2名,共通管から1名)を対象とした。検体は洗浄後,電気泳動(SDS-PAGE)した。各検体に共通してみられた分子量14kDaの極太いバンド,二番目に太い29kDaのバンド,6,10,27,66kDaの細いバンドをそれぞれ切り出し,トリプシンによるゲル内消化を行った。脱塩処理後,MALDI-TOF型質量分析計でマススペクトルを測定した。得られたペプチド質量データをMS-Fitにてデータベース検索を行い,peptide mass finger printing法によるタンパクの同定を行った。SDS-PAGEで10,14,27,29kDaのバンドはすべてlithostathine(pancreatic stone protein)と同定された。6kDaのバンドはlithostahineと推定された。66kDaはアルブミンと同定された。拡張症におけるproteinplugはlithostathineで構成されていることが判明した。Lithostathineは膵液中に分泌されるタンパク(16kDa)で,トリプシンにより分解されて不溶性(14kDa)となり,二量体から四量体を形成し,自己集合して線維となる。拡張症では逆流した膵液に含まれるトリプシノーゲンが胆汁中で活性化されてlithostathineを分解し,形成された線維が凝集してprotein plugを形成すると考えられた。
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