研究課題
基盤研究(C)
集中治療医学の発達にも関わらず敗血症性多臓器障害(Multiple Organ Dysfunction Syndrome: MODS)の死亡率は依然として高い。特に肝臓はMODSの標的臓器であるのみならず、炎症反応を増強することにより、MODSの増悪化に大きな役割を果たしている。そこで、我々は、MODSの肝不全に対する新しい細胞保護療法を開発する目的で、四塩化炭素投与によるラット劇症肝炎モデルを作製し、このモデルにin vitroでストレス蛋白heme oxygenase-1(HO-1)の誘導能がある抗炎症性サイトカインであるインターロイキン-11(IL-11)を投与し、肝の傷害・炎症に及ぼす影響を検討した。その結果、IL-11の投与は血清ALT値の低下と肝組織傷害の改善をもたらした。また、炎症性メディエーターであるtumor necrosis factor-alphaとinducible nitric oxide synthaseの遺伝子発現に対してもIL-11はその発現の抑制をもたらした。さらに、これらの炎症性メディエーターの転写促進因子であるnuclear factor kappa-BのDNA結合活性に及ぼす影響を検討したところ、四塩化炭素投与により上昇した活性はIL-11の投与により著明に低下した。炎症反応は細胞に酸化ストレスを惹起し最終的に細胞を傷害する。そこで次に、IL-11が酸化ストレスの指標の一つである細胞のmalondialdehyde(MDA)値に及ぼす影響を検討した。IL-11は四塩化炭素投与により上昇したMDA値を有意に低下させた。一方、これらの保護効果はストレス蛋白HO-1の拮抗阻害薬の投与により消滅した。以上より、IL-11は、ストレス蛋白HO-1の誘導を介して炎症反応を軽減し、細胞に対する酸化ストレスを和らげることにより、肝保護効果を示したと考えられた。IL-11は酸化ストレスから細胞を保護することにより、MODSの肝不全に対する新しい治療薬となる可能性がある。
すべて 2009 2007 2006 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (2件)
Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol Vol. 290, No. 1
ページ: 114-9
日本Shock学会雑誌 22
ページ: 96-99
10024300584
The Journal of Japan Shock Society Vol. 22, No. 2
エンドトキシン研究 10
ページ: 65-68
Shock学会雑誌 22
Int J Mol Med 18
ページ: 537-46
Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 290
Int J Mol Med Vol. 18, No. 4
Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 290・1
International Journal of Molecular Medicine 18
http://www.okadaimasui.com/