研究概要 |
除草剤パラコートの急性毒性機構に関与する新規酵素NADH-キノンオキシドリダクターゼm(NQO_m)の本態と機能について以下の研究成果を得た。 1.単離ミトコンドリアのDCF蛍光解析法において,NADHとパラコートを同時添加するとNQO.活性による過酸化水素生成が見られた。この活性は外膜チャネルのvoltage-dependent anion channel(VDAC)に対する抗体およびアニオンチャネルブロッカーDIDSにより抑制された。 2.単離ミトコンドリアにNADHとパラコートを同時添加すると,ミトコンドリアが膨潤破壊されるが,この反応は抗VDAC抗体によって抑制された。 3.ミトコンドリア外膜より精製したNQO_m画分を抗VDAC抗体で免疫沈降処理するとその活性が抑制された。また,Western blot法で画分中にVDAC蛋白が検出された。 4.VDAC1プラスミドを導入したVDAC高発現HeLa細胞にパラコートを添加すると,対照プラスミド導入細胞に比べて高い細胞内過酸化水素生成がみられた。また,パラコートに対する50%増殖阻害速度(IC_<50>)が対照細胞に比べて低下した。 5.siRNAによるvDAc1ノックダウン細胞ではパラコートによる細胞内過酸化水素生成が抑制され,Ic_<50>値が対照細胞より上昇した。 6.NQO_mはキノン類も基質とし,抗癌物質であるフラノナフトキノン類でも同様の機構で癌細胞に対する毒性を示すことが明らかとなった。 以上の結果より,VDACがNQO_mの構成蛋白質としてパラコートやフラノナフトキノンの細胞毒性に関与していることが明らかとなった。
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