研究概要 |
タイトジャンクション(TJ)は上皮細胞間隙を通過する細胞間輸送経路のバリアーとして機能し,TJを構成するタンパクとしてはオクルディン(OLD)とクローディン(CLD)が知られている。CLDは24種からなるファミリーを形成しており,細胞,組織特異的に発現する。エナメル芽細胞は口腔粘膜上皮に由来し,エナメル質形成を行い,エナメル質形成に際し必要なタンパクやミネラルはエナメル芽細胞層を通過して輸送される。本研究では上皮細胞を介しての物質輸送に重要な機能を有するTJに着目し,エナメル芽細胞におけるOLDならびにCLD-1からCLD-10までについて,それらの発現パターンを免疫組織化学的に調べた。形成期エナメル芽細胞においてはOLDとCLD-1,-8,ならびに-9が遠心端に発現していた。成熟期のエナメル芽細胞においては,形成期エナメル芽細胞において発現がみられたOLD,CLD-1,-8,-9に加えCLD-6,-7と-10が新たに発現していた。これらのOLDならびにCLDは共に近心端と遠心端に局在が認められ,且つruffle-ended ameloblast(R-A)とsmooth-ended ameloblast(S-A)の領域には無関係であった。他方,成熟期のエナメル芽細胞層の部位によっては,これらOLDならびにCLDが近心端にのみ発現している領域もみられた。得られた結果から,エナメル芽細胞におけるOLDならびにCLDは形成期と成熟期で発現パターンならびに局在に著しい相違があることが示され,且つこれらの相違はエナメルタンパクならびにミネラル輸送機構など,細胞機能に関連していることが示唆された。
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