研究概要 |
骨芽細胞におけるオカダ酸誘導アポトーシスと核小体蛋白分解機構を解明するために本研究を計画し,以下の研究成果を得た。(1)オカダ酸誘導アポトーシス細胞において分解される核小体蛋白の同定と細胞内局在の検討。(2)オカダ酸処理によるeIF-2α,IκBα,NF-κBのリン酸化とその部位の決定。(3)PKR変異細胞株の樹立とその性質の解明。 1.オカダ酸はヒト骨芽細胞にアポトーシスを誘導した(Haneji,2005)。アポトーシス細胞では110kDaのニュークレオリンの蛋白量が減少し,分子量80kDaの蛋白質の断片が新たに出現しその発現量が増加した。正常細胞では,核小体にPP1δの局在と一致するニュークレオリンとAgNORsが検出されるが,アポトーシス細胞では,この構造物は分解されて検出されなかった(Kito et al.,2005:Haneji 2005)。ニュークレオリンは細胞周期の停止によりそのリン酸化が変化し,細胞周期により細胞内局在が変化した(Morimoto et al.,2007)。オカダ酸はp65NF-κBのSer536のリン酸化を促進し,p65NF-κBの転写活性を促進した(Ozaki et al.,2006)。 2.PKRの触媒ドメインに変異を起こした遺伝子を骨芽細胞に導入し,ドミナントネガティブに発現する細胞株をヒト(MG63)とマウス(MC3T3-E1)で作製し,実験に用いることができた(Morimoto et al.,2005;Yoshida et al.,2005)。この細胞株は骨芽細胞としての特性を喪失していたのでPKRは骨の形成に必要な因子であることが判明した(Yoshida et al.,2005)。また,この変異細胞ではIκBのリン酸化を介したNF-κBの径路に変異が生じていた(Morimoto et al.,2005)。
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