研究分担者 |
十川 千春 岡山大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (10253022)
美藤 純弘 岡山大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (20240872)
十川 紀夫 岡山大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (30236153)
松尾 龍二 岡山大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (30157268)
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研究概要 |
スライスパッチクランプ法を用いて,Hチャネル(過分極作動性カチオンチャネル)活性を示す最後野ニューロンについて以下のことを明らかにした。 1)細胞形態について ニューロバイオチントレーサーを用いた免疫組織化学的手法を用いた。Hチャネル活性を示すニューロンの細胞体は比較的小型のものが多く,平均直径が10,4±1.2ミクロン,Hチャネル非活性を示し,遅減衰型一過性外向き電流が検出されるニューロンでは13.9±1.8ミクロンで,統計学的に有意差が認められた。細胞体からは2つの樹状突起と1本の軸索が起始し,軸索は樹状突起と比べて有意に細い像を呈していた。いくつかの細胞はその樹状突起を弧束核内に100ミクロン程度延ばしていた。従来,小型で均一な細胞形態とされてきた最後野ニューロンだが,膜特性の違いに相関した形態の違いが見いだされた。また,Hチャネル活性を示す最後野ニューロンの樹状突起が孤束核に至っていることから,弧束核に投射する迷走神経の求心性情報を直接受けている可能性が示唆された。 2)最後野ニューロンのATPに対する感受性について 最後野ニューロンの60%(n=52/86)がATPに対して応答を示し,1)著明な内向き電流誘発(n=26),2)著明な外向き電流誘発(n=1),3)持続的な膜電流変化は少なく,mEPSCの頻度が著明に増加(n=24)であった。ATPに誘発される膜電位の脱分極は11.5±3,2mV(n=13)および過分極6.7±0,2mV(n=2)であった。Hチャネル活性を示さないニューロンの方がATPに対する膜電位の変化が5倍以上大きい値を示した。また,過分極応答はHチャネル活性を示さないニューロン(n=2)にのみ観察された。これらより,最後野ニューロンの活動制御に,シナプス後部またはシナプス終末部に存在するATP受容体が重要な働きをしていることが明らかとなった。
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