研究課題
基盤研究(C)
血漿浸透圧の上昇や循環血液量の減少によって口渇感が惹起される。このような現象を生じる原因となる脱水や出血時に、視床下部室旁核や脳室周囲器官の脳弓下器官領域でノルアドレナリンのレベルが上昇し、飲水によって減少されることが報告されている。また不安や焦燥、怒りなど精神的なストレス状態に陥ったときも、のどがからからに渇き口渇感を覚える。安静時の唾液分泌が50%以下に減少すると口渇感が生じるといわれる。ノルアドレナリンはストレス時に交感神経系から分泌され唾液腺に作用することは良く知られているが、ノルアドレナリンは中枢性にも作用し、唾液分泌を調節していると考えられる。唾液分泌量の減少の結果としての口渇感の発生、それに伴う飲水行動の誘発には、脳神経核が強く関与する。我々の講座では、最近、中枢性に唾液分泌が抑制されることを報告している。(Ito et al.,2002)これらのことをふまえ、口腔乾燥感と中枢性ノルアドレナリン受容との関係を明らかにする目的で実験を行った。ラット脳スライス標本を用い、パッチクランプ法にて調べる。膜電流および膜電位固定を行い、脳弓下器官のノルアドレナリンや種々のアドレナリンアナログに対する反応を調べた。ニューロン自体の反応やシナプス入力にどのように作用するかを電気生理学的に調べた。その結果、脳弓下器官ニューロンは、α1アドレナリン受容体を介して、直接興奮性入力を受けていることがわかった。また、GABA作動性シナプス前線維のα2アドレナリン受容体の活性化による抑制性入力の減少により、脳弓下器官ニューロンは興奮性を増していることも判った。唾液分泌と中枢性アドレナリン受容との関係を明らかにすることは今後の問題として残された。
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