研究概要 |
本研究は,齲蝕病巣の活動性に対する客観的診断法の確立をめざし,CIE1976L*a*b*表色系による色彩評価法と電気的評価法,レーザー診断装置DIAGNOdentを組み合せた客観的総合診断法を構築するものである.まず,これらの評価法を齲蝕歯質評価に応用する際の最適な評価条件や精度について検討し,1)電気的評価法は,歯質内部の3次元的な状態を評価するのに適していた.2)健全歯質や齲蝕歯質についてのL*,a*,b*値の分布から策定した各種の色評価用標準色見本の精度確認を行い,齲蝕評価に最適な色補正用標準色見本を確定した.3)齲蝕歯質のDIAGNOdent値とL*値との間には,強い負の相関関係があることを見いだした.ついで,各診断法による齲蝕病巣各断面の評価結果,ヌープ硬さの分布とPCR法による細菌検出結果との関係を調べた.その結果,1)齲蝕表層から病巣深部にかけてのヌープ硬さの増加が緩やかな活動性齲蝕では,齲蝕病巣表層のa*値は,ヌープ硬さの増加が急な停止性齲蝕と比較して大きくなったことから,a*値により歯質切削前の齲蝕病巣の活動性を臨床評価できる.2)電気的評価結果は歯質切削前の齲蝕病巣の広がりを評価するのに適している.3)停止性および活動性齲蝕とも齲蝕深部に向かうほど,L*値は大きくなり,DIAGNOdent値は小さくなったことから,それらは齲蝕の程度を判定する指標になりうる.4)細菌検出率0%の歯質のL*値は停止性および活動性齲蝕とも約65以上であったことが示された.さらに,従来法による齲蝕除去後の歯質について,色彩評価やレーザー評価結果のばらつきが大きいことも判明した.以上の結果から,色彩評価法と電気的評価法,レーザー診断法を組み合せることで,歯質切削前の齲蝕病巣の活動性,歯髄方向への齲蝕の広がり,齲蝕削除時の齲蝕の程度,細菌検出率を推定できる可能性が示唆された.
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