研究概要 |
【目的】本研究の目的は、鏡面仕上げされたセラミックスとレジンセメント間の微少引っ張り接着強度(μTBS)測定を行い、酸性モノマーで活性化されたシランカップリング剤で形成されたシロキサン結合の耐水性について調べることである。なお鏡面仕上げは、接着強度に与える機械的勘合力の影響を最小にするために行われた。 【材料と方法】Feldspathic porcelain(Super Porcelain AAA, Noritake)を用い、約7×7×10mmのセラミック試料を作成し、ダイヤモンドペーストを用い被着面の鏡面仕上げを行った。蒸留水中で10分間超音波洗浄を行った後、被着面は酸性リン酸モノマー(MEGA BOND PRIMER, Kuraray)で活性化されたシランカップリング剤(PORCELAIN BOND ACTIVATOR, Kuraray)で処理された。シラン処理された試料は4-META/MMA-TBBレジンセメント(Super-Bond, Sun Medical)で接着し、μTBS試験用ビーム試料(平均接着面積:1.07±0.12mm2)を作成した。これらの試料は37℃水中(Group1)または空気中(Contro1)に0(Baseline),1,2,4,8週間保管後、ttTBS試験に供された。同様の実験を、酸性モノマーの代わりにpH2.4の酸性溶液で活性化されたシランカップリング剤(Group2)、およびシランカップリング剤単味(Group3)を使用して行った。 【結果】Baselineでの接着強度は26Mpaであり、Contro1群は全ての保管時間において同様の接着強度を示した。一方Group1群はBaselineに較べやや低い接着強度を示したが、保管時間が増大するにつれて接着強度が減少するという傾向は認められなかった。重回帰分析の結果、保管状態と接着強度の間には相関があるが(p<0.05)、保管時間と接着強度との間には相関がないことが分かった。さらに、Group3の接着強度はGroupl,2の接着強度に較べ有意に低い値を示したが(ボンフェロニの多重比較試験:p<0.01)、一方GrouplとGroup2の間には有意差がなかった。 【結論】酸性リン酸モノマーで活性化されたシランカップリング剤は、シロキサン結合の耐水性を有意に改善した。これは、活性化剤中のモノマー(疎水基を含む)に依るのではなく、シランカップリング剤を酸性化したことに起因することが分かった。
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