研究概要 |
本研究は,MTAの硬組織形成促進作用に着目して,歯髄細胞に対する本材構成成分の間接的作用について培養ヒト歯髄細胞を用いて検討した。 1.溶出成分の検討 硬化MTA:からは,約0.3mMのCaイオンの溶出が恒常的に認められ,他の構成成分と比較して多かった。 2.溶出Caイオンが培養ヒト歯髄細胞の遊走に及ぼす影響 溶出caイオンを含むMTA溶出溶液とBoyden chamber法を応用して,培養細胞の遊走能を検討したところ,コントロールと比較して遊走細胞数は多く,Caキレート剤添加によりCaイオンの影響を排除したところ遊走細胞数はコントロールと比較してほぼ同程度まで減少した。また,MTA溶出Caイオン濃度と同等のCaCl_2添加培地を用いた同実験ではMTA溶出溶液と同程度の細胞遊走を認めた。このことから,歯髄細胞の遊走にMTAから溶出するCaイオンが深く関わっていることが明らかとなった。 3.溶出Caイオンが培養ヒト歯髄細胞の増殖に及ぼす影響 実験2と同様にCaイオンを含むMTA溶出溶液とCell culture insert法を応用して,培養細胞の増殖を検討したところコントロールと比較して優位な細胞増殖を認めた。このことから,MTAはCaイオンの溶出を介して歯髄細胞の増殖に関与していることが明らかとなった。 4.石灰化物形成および関連タンパク遺伝子発現の検討 MTA溶出溶液中で歯髄細胞を培養したところ,18日目にコントロールと比較して優位な石灰化物形成を観察した。RT-PCRでは,14日目にALPase,21日目にDSPPの遺伝子発現をみた。(現在実験継続中)
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