研究概要 |
本研究では,変形性顎関節症の抗サイトカイン療法としてエタネルセプトの顎関節腔内注入療法の実用化を目的に,以下の基礎的実験を行った. 新生児ラット膝関節より採取した関節軟骨細胞を初代培養し,TNFα単独,IL1-β単独,同時刺激24時間後にエタネルセプトを培養液に加え,6,18時間後のmmp3,9,13発現変化を経時的にリアルタイムRT-PCR法にて定量した. 1)各単独,同時刺激で24時間後のmmp3,9,13発現は無刺激に比べ有意に増加し,同時刺激では単独刺激に比べ,いずれのmmp発現量も大きく増加した. 2)エタネルセプトは,TNFα単独と同時刺激で,いずれのmmp発現も抑制したが,IL-1β単独刺激では,抑制効果を示さなかった. 3)mmp3に関しては,TNFα単独刺激24時間後に,mmp9に関しては,TNFα単独刺激12,24時間後に,エタネルセプトによりその発現が有意に抑制された. ラット変形性膝関節症モデルの膝関節腔内へエタネルセプトを局所投与し,組織学的に検討した. 1)いずれのエタネルセプト投与群においても関節軟骨破壊に対する抑制効果はみられなかった. 以上から,細胞実験では,エタネルセプトはTNFαが関与する軟骨細胞でのMMP3,9,13産生誘導を抑制することが示唆された.また,IL-1β単独刺激の場合,エタネルセプトによる抑制効果はみられなかったが,相乗効果を示すTNFαどの共存環境では,抑制傾向を示すことから,滑膜炎を伴うような炎症反応の強い変形性関節症では,その効果が期待できるかもしれない.今回の動物実験では,エタネルセプトの関節軟骨破壊への抑制効果は認められなかったが,今後は本研究モデルの妥当性を含め,さらなる検討が必要と考える. 本研究では,治療法実用化には至らなかったが,今回の結果は今後,本研究目的を遂行するには欠かせないデータといえる.
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