研究概要 |
本研究では,新規な3次元スキャホールドであるチタンファイバーメッシュ(Tiメッシュ)に分子プレカーサー法を用いて炭酸含有アパタイト(CA)薄膜コーティングを施し,動物埋入実験によってその骨適合性について検討した.分子プレカーサー溶液はEDTA-Ca錯体のアルコール溶液とメタリン酸ジブチルアンモニウム塩をCa/P=1.67の割合で調整して作製した.Tiメッシュを分子プレカーサー溶液に20分間浸漬し,その後,60℃で20分間,600℃で2時間加熱処理を行なった(3回繰り返し).電子プローブマイクロアナリシス(EPMA)測定の結果,Tiメッシュ内部までCA薄膜が形成されていた.薄膜形成法と知られているPVD法ではTiメッシュの様な複雑な構造体の内部にまでCA薄膜を形成することは不可能であり,分子プレカーサー法の有効性を明確にすることができた.擬似体液に浸漬したところ,CAコーティングを施したチタンファイバーメッシュ上にはその内部にまで,アパタイト結晶が析出した. さらに,CA薄膜形成を施したチTiメッシュの骨適合性について調べた.動物埋入実験は日本大学松戸歯学部動物実験倫理委員会の指針に従って行った(承認番号05-0016).ウサギの大腿骨関節内側穎部の海綿骨部にCA薄膜コーティングしたTiメッシュを埋入した.その結果,埋入12週間後でCAコーティングTiメッシュの内部にまで骨が良好に侵入して形成されている様子が観察された.一方,無処理Tiメッシュでは,ほとんど骨は形勢なれていなかった. 以上,分子プレカーサー法を用いてCAコーティングを施したチタンファイバーメッシュは良好な骨適合性を示すことが判明した.CAコーティングチタンファイバーメッシュは再生医療のための3次元スキャホールドとして有望であることが示唆された.
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