研究概要 |
使用した材料は4種の合着用セメントと3種の仮着用セメントであり,合着用ではスーパーボンドC&B(サンメディカル),パナビアF(クラレメディカル),ネクサス(Kerr)およびフジルーティングL(ジーシー)と各付属の処理剤(方法)を使用し,仮着用ではハイボンドテンポラリーセメントハード(松風),プリージノールテンポラリーパック(ジーシー)およびネオダインT(ネオデンタルケミカル)を用いた。スーパーボンドC&Bならびに付属の前処理方法と牛歯象牙質との接着強度は,ユージノール系仮着セメントの使用により低下する傾向があった。また,パナビアFならびに同前処理方法との接着強度はカルボキシレート系仮着セメントのハイボンドテンポラリーセメントの使用により低下する傾向があった。しかし,非ユージノール系仮着セメントであるフリージノールテンポラリーパックを使用した場合は,使用した合着用セメントと各処理剤(方法)との接着強度の低下は少なく,同仮着剤の使用が接着強度へ及ぼす影響は小さいことが判明した。 以上の理由は,1.仮着剤に含まれるユージノールがレジン系装着材料の重合を阻害したこと,2.処理剤に含まれている高級脂肪酸などの油性成分の残留でセメント合着面であるリン酸エッチング面のぬれ性が低下してシステム的に十分に機能しなかったこと,3.カルボキシレート系仮着剤は歯質固着が強く除去困難であり,合着面の多量残留が考えられたこと,4.ハイボンド剤による象牙質面の耐酸性の向上が考えられること,5.タンニン酸による象牙質表面のタンパク凝固作用でエッチング効果が低下したこと,などによるものと考察した。 本研究による臨床示唆として、(1)スーパーボンド合着前のユージノール系仮着剤の適用,(2)パナビア合着前のハイボンド剤仮着剤の適用,これらの術式は避けたほうが良いと云える。
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