研究概要 |
電解酸性水(約pH3)、電解アルカリ水(約pH12)、これらの混合液2種(pH5.00と7.00)の計4種の液がヒト天然抜去歯と歯科用合金(8種)に与える影響を調べた。 1.ヒト天然抜去歯の場合:電解酸性水では肉眼的に1時間で歯の表面に軽度な白濁がみられ、経時的にその程度は増した。色差は電解酸性水に浸漬した試料のみが7.0で「きわめて著しく異なる」に属した。重量変化は電解酸性水で大きく、浸漬時間が長くなるにつれて大きく減少した。電解酸性水浸漬の縦断研磨標本の光顕観察では6時間以上浸漬すると表面に薄い透明層が認められ、その幅は経時的に厚くなり、CMRではX線透過像として観察された。EPMAによる元素濃度分析ではその部位のCa,P,Mgとも濃度に明らかに勾配の減少傾向がみられた。 2.歯科用合金の場合:色差は電解酸性水で最も大きく16.6、次いでpH5.00で11.5、pH7.00で10.3、電解アルカリ水では3.0であった。また、色差は7種の合金種ではpHが上がるにつれて小さくなったが、銀合金のミロスリーのみが、酸性水に浸漬すると白変し12.5と低く、pHが上がるにつれて黒変し、pH7.00では26.4であった。電解酸性水に浸漬した合金のうち、金銀パラジウム合金を除く6種類の合金で重量の減少が認められ、特に金合金の減少率が大きく、-0.03〜-0.09%であった。重量変化率は全合金で動的浸漬より静的浸漬の方が大きかった。 以上より、電解酸性水はヒトの歯の表層を脱灰させ、歯科用合金を変色させる上、大きな重量変化を示すことが明らかになった。この電解酸性水に同時生成される電解アルカリ水を混合することにより、脱灰や変色、重量変化を軽度にすることが認められた。このことから酸性水を含漱剤など口腔に適用するときはpHの値をコントロールする必要があると考える。
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