研究概要 |
咀嚼筋の機能の客観的評価の可能性を明らかにする目的で,クレンチング時の咀嚼筋筋活動を分析し,以下の結果を得た. 1.健常者に最大クレンチングの80%のクレンチングを10秒間維持させた時の咬筋筋活動をEMGで記録後,筋活動の原波形とEMGパワースペクトルを同時にコンピュータのディスプレイに表示できるプログラムを作成できた. 2.健常者に80%のクレンチングを2種類の条件(80%MVF:咬合力をフィードバックさせた場合と80%MVC:筋活動の積分値をフィードバックさせた場合)で10秒間維持させた時の咬筋筋活動と咬合力を記録後,クレンチング中の10秒間を2秒間ごとの5区間に分け,第1区間を100%とした場合の第2〜第5区間における咬合力,咬筋筋活動の積分値とMPF値の各相対値について,経時的変化を調べた.その結果,MPF値の相対値は,80%MVF時,80%MVC時ともに有意な経時的変化を示したが,80%MVF時と80%MVC時との間に有意差が認められなかった.このことから,短時間のクレンチングでは,一定の咬合力と筋活動を発揮できること,また咬筋のEMGパワースペクトルは,記録条件の差異の影響を受けないことがそれぞれ示唆された. 3.健常者に80%MVCを10秒間行わせた時の咬筋筋活動と咬合力を記録後,2秒間ごとの5区間に分け,第1区間を100%とした場合の第2〜第5区間における咬合力とMPF値の各相対値について,経時的変化を調べた,その結果,咬合力の相対値は,各区間がいずれも100%に近似し,経時的変化が認められなかった.一方,MPF値の相対値は,徐々に減少し,有意な経時的変化を示した.これらのことから,短時間のクレンチングでは,咬合力が一定に保たれること,また咬筋EMGパワースペクトルのMPF値は,有意に減少することがそれぞれ示唆された.
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