研究概要 |
インジウム化合物に発生毒性が指摘されていることから,インジウムを含む歯科用合金の発生毒性リスクについて以下の検討を行った. 1.歯科で使用されるインジウム含有の合金についてスクリーニングする目的で,インジウム含有割合がそれぞれ10%,15%,20%のAg-In合金,2%,4%,6%のAg-Pd-Au-Cu合金ならびに陶材焼付用金合金を試作した.合金粉末がダイヤモンド微粉末と共に攪拌溶解装置を用いてDulbecco's Modified Eagle Mediumまたは人工唾液中で抽出した結果,Ag-20%In合金は他合金と比べて心筋への分化率が低かった.一方,人工唾液中ではES-D3細胞は全く分化せず死滅した. 2.スクリーニングした各合金の中で分化率が低かったAg-20%In合金,ならびに6%のInを含むAg-Pd-Au-Cu合金を用いて,上下顎模型の左右臼歯部を支台粛形成して両合金で鋳造冠を作製した.顎運動をシミュレートすべく,6時間ならびに12時間にわたって機械的摩耗運動を加えた.組成金属の溶出量はICPSによる結果からいずれも1ppm以下であった.また,ES-D3細胞の心筋への分化率は,Ag-20%In合金でAg-Pd-Au-Cu合金よりもやや低下した.ES-D3細胞とBalb c/3T3細胞の細胞生存率は試料無添加の対照群と差が認められなかった. 3.発生毒性のリスクの存在が考えられたAg-20%In合金について,異なるエンドポイントであるラット全胚培養法による発生毒性試験を実施した.その結果,卵黄嚢の直径,頭臀長、頭長,体節数,タンパク量などいずれも対照群と有意差が認められず,胚の異常は確認できなかった. 以上,今回実験を行ったインジウムを含む試作合金の結果から発生毒性リスクはきわめて低いと考えられた.
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