研究分担者 |
進藤 正信 北海道大学, 大学院歯学研究科, 教授 (20162802)
小林 正伸 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教授 (80241321)
東野 史裕 北海道大学, 大学院歯学研究科, 助教授 (50301891)
大廣 洋一 北海道大学, 大学院歯学研究科, 助手 (40301915)
戸塚 靖則 北海道大学, 大学院歯学研究科, 教授 (00109456)
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研究概要 |
がん組織は増殖活性が高く低酸素状態に曝されているにも関わらず,細胞死の抑制がみられる.その原因の一つに低酸素誘導性因子HIF-1の関与が報告されている.このHIF-1により誘導される遺伝子の一つに血管拡張作用を有する血管作動性ペプチドであるAdrenomedullin(以下AM)があることがDNAマイクロアレイによる検索で明らかになった. 22例の舌扁平上皮癌を対象とした免疫染色を行い,AMの発現と臨床的・病理組織学的所見として重要な腫瘍の転移活性との関係,およびそれに伴う血管拡張との相関について検討したところ、22症例中11例にAMの発現が認められ,発現率は50%であった.なお,AMの発現と年齢および性別の間に有意な相関は認められなかった. AMの発現と頚部リンパ節転移の有無について検討した.頚部リンパ節転移を認めた12例中8例でAMの発現が認められた.一方,リンパ節転移の見られなかった10例ではAMは3例にのみ陽性で,AMを発現している舌扁平上皮がんはリンパ節転移の頻度が多い傾向が認められた。抗CD34抗体を用いて腫瘍周囲の血管の免疫染色を行った.AM陰性例では,腫瘍問質に比較的小型の血管が認められるのに対し,AM陽性例では多数の拡張した血管が認められた.このような抗CD34抗体を用いた腫瘍周囲間質の血管径を画像解析により測定し,定量化したところ,AM陽性群ではAM陰性群よりも血管径が大きい傾向を示していた。 AMの27-115アミノ酸を欠失し116番のスレオニンをセリンに変異させたAMA214、および95-115アミノ酸を欠失し同様の変異を加えたAMA224の2種類のAM antagonisit発現ベクターを実験に用いた。SCIDマウスに移植した腫瘍細胞に対してAMA214とAMA224を腫瘍内および筋肉内に注入したところ、腫瘍の縮小がみられ、CD31陽性の腫瘍血管の消失がみとめられ、AMをターゲットにした遺伝子治療の奏効性を示唆するものだった。
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