研究概要 |
平成16年度はsiRNA発現ベクターの安定導入によるp63をノックダウンさせた扁平上皮癌細胞株(A431_deltap63とOM-1_deltap63)を樹立し,それら細胞の浸潤能の亢進を確認することにより,p63の欠失による浸潤経路を見いだした. 平成17年度はp63が発現していない上皮・間葉移行(EMT)表現型扁平上皮癌細胞株であるHOC313にdeltaNp63alphaを発現ベクターで安定発現させ,p63の浸潤経路を確認した. (1)HOC313_deltaNp63alpha細胞についてウェスタンブロット法をおこなった結果,JAG1およびJAG2の発現の誘導を認めた.一方で,E-カドヘリンの発現の誘導はなかった. (2)マトリゲルおよび再構成三次元培養の結果,HOC313_deltaNp63alpha細胞の浸潤能の低下を認めた. 以上の結果から,SnailはE-カドヘリンと平行してp63の発現を転写レベルで抑制すること,つまりp63の発現抑制による浸潤能の獲得は,E-カドヘリンの発現抑制およびEMTとは独立した経路であることが証明された.さらにp63の下流としてNotch経路が重要であることを見いだした. これまでp63の癌における役割は明確でなく,発癌あるいは癌抑制の機能における模索に終わっていたが,この結果によって新たにp63の癌の浸潤への直接的な関与が始めて示された.現在,これらの結果を少なくとも2報の論文として作成中であり,1報はすでに投稿し,審査中である.
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