研究概要 |
顎変形症の三次元的な評価・治療に応用するシステムとして、硬組織と軟組織の三次元形態分析が可能なシステムを開発、臨床応用を目的に本研究を行った。歯科用インプラント埋入支援システムを機能拡張した顎矯正手術支援システムSimPlantProCMFを(株)横河マテリアライズ、およびベルギーMaterialize社の研究開発協力を得て改良して本研究に使用した。三次元分析を含めた治療計画データは、東京歯科大学千葉病院歯科放射線科所有のマルチスライスCT (Siemens Somatome Plus4/Volume Zoom)を用いた。研究システムは、パーソナルコンピュータ(EPSON社製Pentium D 3.40GHz, Memory 3.00GB, Graphics FireGL-3100)で、OSはWindowsXP SP2を使用し、(1)Cephalometric Analysis : combined 2D/3D measurements,(2)Simulation of Osteotomies,(3)Simulation of Distractions,(4)Extra simulation tools,(5)Soft Tissue Simulation,(6)CMF Guidesの6機能うち、三次元セファロ分析を行なったうえで、その計測点を基準をとしてWizard(自動分割支援)機能により、Le Fort I 型骨切り術、下顎枝矢状分割術を行い、移動骨片の位置にあわせて軟組織の変化を三次元的にシミュレートした。さらに、実際の術後のCTよりの顔面軟組織形態と予測画像の一致について検討した。その結果、1)Wizardによる骨切り術を行なうためには、標準の三次元セファロ分析点以外の基準点を設定する必要性があった。2)Wizardは、Osteotomyに比べてDistractionのほうが操作性や治療計画に優れていた。3)顔面の非対称性の三次元的評価と治療計画には、従来の二次元のセファロ分析より有用性が高いシステムであった。 顎変形症の治療において、頭蓋に対する上下顎骨の位置関係を三次元的に評価し、手術結果の予測が可能になったことで、二次元での治療計画に比べるとその有用性は大きく、患者へのインフォームドコンセントにSim Plant CMFを応用することで、既存の二次元の評価システムと比べて、以下の結論を得た。 1)三次元セファロ分析については、その有用性についてClinical Normとの比較が不可能であり、治療の目標値に合わせた評価は困難(擬似的に二次元座標系への分析値の変換がどのような意義を持つかは不明)であった。2)骨切り術のうち、定型的な上下顎の手術は実用レベルであったが、歯槽部における手術や上顎の水平骨延長への今後の対応が必要である。3)骨延長術についは、延長方向とDistraction Deviceの装着、および延長方向をシミュレート可能であり非常に有用性が高かった。4)骨格の三次元診断や治療評価への応用が研究レベルから臨床レベルになったと考えられた。
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