研究概要 |
骨誘導タンパク(BMP)は顎顔面の形成に中心的な役割を担っている。そこで本研究では、BMPを中心に、またBMPと遺伝子ネットワークを持つnoggin、RANK/RANKL/OPGおよびIGFについて検索を行った。先の研究によって、BMPは顎顔面の骨形成が行われる部位の骨の前駆細胞と考えられる問葉系細胞に発現することを認めた。BMPと拮抗作用を持つnogginも同様の細胞に出現し、骨芽系細胞はBMPとnogginは遺伝子ネットワークによって、骨芽細胞系細胞の分化や増殖を調節しているものと考えられた。TNF)リガンドファミリーに属し,骨芽細胞系細胞によって産生されるRANKL,は破骨細胞の分化および成熟に重要な役割を果たすことが明らかにされている。また,RANKLが破骨細胞のレセプターであるRANKに結合することによって,シグナルが細胞内に伝達される。さらに,OPGがRANKLとRANKとの結合を阻害することによって破骨細胞誘導作用を阻害する。このようにRANKL/RANK/OPGシステムが骨を形成する細胞の機能を調節していることを示唆している。このシステムは骨の改造に関係しBMPによって発現が調節されている。顎顔面および歯槽骨では、RANKL骨芽細胞の分化初期に強く発現し、後期では弱かった。それに対して,骨膜においてはRANKLと同様の局在を示したが骨芽細胞の分化の遅い時期に発現した。また破骨細胞に最も強い発現がみられた。OPG抗体を用いた免疫反応では,骨膜付近の前骨芽細胞や骨膜から骨組織の中央部に位置する骨芽細胞に免疫反応がみられた。一部の破骨細胞には強い免疫反応が観察された。RANKLのシグナル伝達物質のTRAFは,RANKと同様の局在を示した。ANKL/RANK/OPGシステムは,破骨細胞系細胞の分化および成熟を調整して,骨の形成や改造を行う重要な役割を果たすものと考えられた。骨芽細胞の分化を調節すると考えられるRunx2は骨芽細胞の分化初期段階やエナメル芽細胞にも発現した。また、担体とリコンビナントBMPを用いた骨形成や切歯におけるIFGの発現も観察した。
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