研究概要 |
ラット上顎第一臼歯に歯列拡大装置を装着した持続的機械的ストレス負荷モデルを用いて、骨添加のある牽引側歯根膜ならびに骨吸収のある圧迫側歯根膜におけるRANKL, OPG, MMP-2,TGF-β,IFN-β,IFN-γ,eNOS発現と破骨細胞の増大を酵素・免疫組織化学的染色およびTRAP染色によって確認した。 圧迫側歯根膜において持続的機械的ストレス負荷後、1日目は、RANKL,3日目は、RANKL, OPG, MMP-2,IFN-β,IFN-γ,7日目は、RANKL, OPG, MMP-2,TGF-βの発現が牽引側歯根膜より強く認められた。しかし、eNOS発現は、圧迫側および牽引側歯根膜において認められなかった。破骨細胞については、圧迫側歯槽骨に現れ3日目にピークに達するがその後変化は認められなかった。また、圧迫側歯根膜においてそれぞれのサイトカイン発現のピークは、RANKL, OPG, MMP-2,IFN-β,IFN-γが3日目に、TGF-βが1日目に認められた。 この実験結果より、持続的機械的ストレス負荷後のラット歯根膜圧迫側において、歯根膜細胞が継続してRANKL産生しているにもかかわらず破骨細胞の過剰発現が認められなかった。これは、歯根膜細胞と破骨細胞間における破骨細胞活性化因子であるRANKL,破骨細胞活性抑制因子であるOPG, MMP-2,TGF-β,IFN-β,IFN-γによる相互作用で、歯の移動に必要な歯槽骨リモデリングのバランス調整に重要な役割の一部を担っているのでないかと考えられる。以上のことより、歯根膜細胞が、(1)生理的・機械的ストレスの存在下でRANKLネットワークに参加するサイトカインを産生すること、(2)ストレスの種類によって異なるサイトカインを産生することで、骨免疫細胞間に異なるコミュニケーションを成立させる可能性が示唆された。
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