研究概要 |
顎顔面変形および不正咬合が姿勢制御,とくに頭部動揺と体幹動揺に対しどのように影響するかを検討する目的で,下顎偏位症例6名(平均年齢22歳1ヵ月)と正常咬合6名(平均年齢23歳7ヵ月)を被験者に,6自由度顎運動測定装置を用いた顎運動測定装置で、立位・無拘束で下顎機能運動時の頭部運動を測定すると同時に,6自由度人体動作リアルタイム解析装置に上下顎骨の基準マーカーフレームを用いた体幹運動の測定,頸部・肩部・腰部の筋の筋電図の同時記録システムを構築して,記録し、その結果,以下の結論を得た。 1.正常咬合群では、頭部運動の出現率は坐位で96.5±5.6%、立位で96.2±3.6%と高い出現率を示した。 2.下顎偏位群の頭部運動出現率は、坐位で76.9±37.6%、立位で60.5±31.1%と低い値を示した。 3.体幹動揺には、正常咬合者群、下顎偏位群ともに下顎運動に同期して,開口時には前方へ,閉口時には後方へ周斯的な運動を示した.座位では,立位で認められた呼吸と同期している大きな周期の波形が顕著でなかった. 4.体幹動揺量は正常咬合群では立位で81.1±16.1(54.9〜97,3%),座位で87.4±10.8(68.7〜95%)を示し,いずれも頭部運動よりも小さく、座位の方が立位よりも大きくなった.下顎偏位群の出現率は、立位で37.8+13.6(25.9〜60.7%),座位で51.8±17.7(30.3〜70.7%)を示し,正常咬合群に比較し小さい値を示した。また、いずれの体幹動揺も頭部運動よりも有意に小さくなり,すべての被検者において座位の方が立位よりも大きくなった. 以上より,下顎骨偏位を伴う咬合接触による姿勢制御への影響は,上肢・下肢両方におよび,咬合接触、顔面形態の非対称は、姿勢制御とくに頭部運動の協調性に影響を及ぼしていることが明らかにされた。
|