研究概要 |
実験的歯の移動における,破歯細胞の発現様相ならびに増殖,分化,抑制に関与する因子を詳細に検討した.6週齢の雄性ICRマウスを用い,バルビツレートによる腹腔内麻酔の後,切歯に0.012inchのNickel-Titaniumの矯正用ワイヤーを光重合レジンにて固定し,上顎右側第一臼歯を口蓋側に移動させた.歯の移動開始から,2,6,12時間,1,2,3,5,7,14,28日後に,4%パラホルムアルデヒドで灌流固定し,エチレンジアミン4酢酸で脱灰した.アルコール脱水したものをパラフィン包埋後し,ミクロトームにて5μmの矢状断および水平断薄切切片を作成した.脱パラフィン後,酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)染色にて赤紫色に染まる多核細胞を破骨細胞とし,発現様相を経時的に観察した.Connective Tissue Growth Factor(CTGF), Cbfal, Osteopontin(OPN), Osteocalcin(OSC),Collagen type IのRNAプローブを用いてin situ hybridyzation法を行い,mRNAの発現部位を光学顕微鏡にて検鏡し,それぞれの経時的変化を検討した.プローブはdig-UTPでラベリングし,ハイブリダイゼーション後の反応物の可視化はNTP/BCIPにて行った.同様の因子に対して,ABC法による免疫組織化学染色を行い,各因子のタンパク発現と局在を検索した.これらの結果から,本実験系においては破歯細胞が歯の移動から5日及び7日で,圧迫側及び牽引側の両方において,最も多く観察されることが明らかとなった.また破歯細胞の増殖,分化,抑制にOPN及びCTGFが関与している可能性が示唆された.そこで,β-galactosidase遺伝子[LacZ]とOPN及びCTGFの遺伝子を組み込んだplasmid DNAとHMG-1, HVJ-liposomeを混合し複合体を作成し,これをシリンジにより上顎第一臼歯の歯周組織に直接投与し遺伝子導入した後,上記の方法で上顎第一臼歯を移動させることとした.さらに遺伝子導入後に,マウスをパラホルムアルデヒドで灌流固定し,上顎骨を摘出後,薄切切片を作成し,遺伝子の発現様相を検討することにより,導入の試適条件の検索を進めた.
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