研究概要 |
【目的】咀嚼は下顎骨成長に大きく影響を与えると言われている.そこで,研究1では,咀嚼の変化が下顎骨形態及び遺伝子発現変化にどのような影響を与えるのか,研究2では,力学解析に必要な基礎データ収集のため,異なったFacial Patternのにおける各部位の皮質骨の厚みと骨密度の違いを比較検討し,咀嚼が顎骨の成長に及ぼす影響を解明することを目的とした. 【資料および方法】研究1では,生後3週齢ICRマウスを用い,実験群は硬食を与えた群,軟食を与1えた群,硬食と軟食を交互に与えた群の3群に分類した.実験開始1週後および4週後にμCTによる下顎骨の形態計測,H.E.染色染色,軟骨細胞増殖能の評価には,PCNAを用いた.さらに遺伝子発現変化の観察には,Laser Microdissection法を用い,real time PCR法にて軟骨性成長に関連する遺伝子発現量の定量評価を行った.研究2では,Cone-beam CTを用いて3種類のFacial patternにおける皮質骨の骨密度と厚みを計測した. 【結果】研究1)Soft群とHard群において下顎骨形態に明らかな差異が認められた.組織学的評価より下顎頭軟骨において肥大軟骨細胞層は,Hard群で有意に厚かった.軟骨細胞増殖能は,Hard群で最も低かった.さらに,遺伝子発現量の変化においては,Hard群において軟骨細胞の石灰化及び最終分化に関与する遺伝子が有意に高い発現を示していた.研究2)3種類のFacial patternの皮質骨の厚みと骨密度は,統計学的に有意な差はなかった.しかし,Dolico Facial typeでは全ての部位に於いて,皮質骨の骨密度は低く厚みは薄い傾向が示された. 【考察および結論】咀嚼運動が下顎頭軟骨細胞の分化に影響を与え,下顎頭における軟骨成長および下顎骨形態に大きく影響を与える可能性が明らかとなった.さらに,咀嚼筋の性質によって顔面骨格が変化する可能性が示唆された.
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