研究概要 |
本研究の目的は,看護師用のストレス対処法やアサーション方法を開発し,それをWeb上で学習することで,ストレスの軽減および精神的健康度の改善を図ることである。平成17年度は,一般職向けのストレス対処学習プログラムを参考にして,看護師向けのWeb学習プログラムを作成した。プログラムの構成は,看護師のストレスの特徴,アサーション(AS)および職業アイデンティティ(JI)向上方法とした。平成18年度は,Web学習システムの構築後,JIプログラムの学習効果をRCTにて評価した。病院勤務の看護師を対象に,介入群と待機群(対照群)に無作為に割り付けWeb上で学習(3週間)を行った。介入群は学習の前後および学習1カ月後,対照群は学習前の2回および学習直後のそれぞれ計3回のアンケート調査を行った。その結果,介入群において学習前後でJIの一部が向上したのに対して,対照群は悪化するものを認めた。ストレスについては,介入群で「対人関係困難」が改善したが,対照群では悪化するものを認めた。共分散分析の結果,JIの「知識」,「有意味感」,「組織影響感」において介入群の向上が大きかった。平成19年度はASプログラムの効果評価(RCT)を病棟看護師対象にして実施した。その結果,介入群において「ASの知識」は学習後有意に上昇したが,1カ月後にはやや低下を認めた。ASについては介入群では学習1ケ月後で「率直さへの確信」が上昇したが,待機群においては変化を認めなかった。ストレスおよび精神的健康度については,介入群において学習後に「イライラ」が,1カ月後に「量的負荷」が低下した。共分散分析を用いた検討では,「ASの知識」で介入群が待機群より有意に高値となり,精神的健康度の「抑うつ」において改善傾向を認めた。以上の結果より,看護職対象のストレス対処ウェブ学習によって,JI,アサーションの向上,さらにストレス軽減および精神的健康度の改善への効果を確認できた。
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