研究概要 |
看護者の職業性腰痛は深刻であり,効率のよい動作を行うためにボディメカニクスを適切に活用することが求められる。しかし,現状において看護動作時のボディメカニクス活用は不十分であり,ボディメカニクス学習に関する研究も少ない。 そこで,本研究では看護動作におけるボディメカニクス活用と腰部負担との関連を明らかにすることと,看護者の腰痛予防のための「ボディメカニクス活用の自己学習システム」の開発を目的とした。 1.看護動作におけるボディメカニクス活用と腰部負担との関連 看護動作の中でも腰痛を起こしやすい車椅子移乗動作に焦点をあて,看護学生を対象に動作時のボディメカニクス活用と腰部負担との関連を検証した。その結果,多くの看護者が行っている中足法を用いて移乗動作を行った場合,「座らせ」時に腰位置は高く最も前傾姿勢となっていること,腰部筋負荷,自覚疲労度高値であることが認められ,腰部負担を考慮したボディメカニクス活用の重要性を確認した。 2.看護者の腰痛予防のための「ボディメカニクス活用の自己学習システム」の開発 看護学生を対象として,「システムを学習者自身が簡便に装着し操作できること」,「学習者が自己の看護動作を客観的に評価し,動作時の前傾姿勢角度が減少すること」を目標として開発を行った。 具体的には,ベスト式の装着具を作成するなど簡便性と汎用性を追及するするとともに,システム装着・操作マニュアルを作成し,学習者自身がシステムを装着し操作できるようになった。また,前傾姿勢角度が増加すると音声で学習者に警告を発する機能や,看護動作時の映像をシステム表示画面に加えるなど,リアルタイムまたは再生時に学習者が自己のボディメカニクス活用状況をより客観的に評価できるよう工夫した。看護学生を対象にシステム評価実験を行った結果,看護動作時の前傾姿勢角度の減少が認められ,学習効果が得られることが示唆された。
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