研究概要 |
本研究は,ベンチマーキング作成に必要な急性期病院における転倒予測アセスメントツールを検討することを目的とした3年間にわたるものである。(1)研究者らが開発したアセスメントツールを使用し,実際の転倒者について検討した。我々が開発した急性期バージョンのアセスメントツールの項目は(1)転倒経験,(2)認知レベル,(3)排泄介助,(4)椅子からの立ち上がり,(5)移動レベル,(6)内服薬(抗てんかん薬,精神安定剤,睡眠剤),(7)直感の7項目である。この新しいツールを2つの特定機能病院で3ヶ月使用したところカットオフ値2点で感度66.7%,特異度32.7%であった。しかし,相対危険比は3以上であり,非転倒者と転倒者には有意差がみられた。 さらに(2)石川県下の急性期病院6施設での内部ベンチマーキングとしての転倒率・傷害を伴う転倒率,傷害の指標などを調査した。転倒率は2006年度1.11〜3.79,2007年度1.57〜3.50であり,傷害を伴った転倒率は,2006年度0.03〜0.69,2007年度0.23〜0.87であった。 以上から開発したアセスメントツールは,ほぼ有効性があるものの,特異度が低いのは入院時は治療前で転倒のローリスク者を発見できにくいことが示唆された。また,内部ベンチマーキングは米国の報告より低い値を示した。この要因は病院間での転倒の定義などのちがいによると考えられ,さらに継続的な検討の必要性が示唆された。
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