研究概要 |
本研究の目的は,平成15年度〜16年度科学研究費補助金(基盤研究(C))で得られた結果から,母乳育児継続を予測するためのツール(母乳育児予測ツール)を開発し,そのツールの臨床的有用性を検証することである。 1.母乳育児予測ツール(BFPT:Breast-Feeding Prediction Tool)の作成(平成17年度) BFPTは,平成15年度〜16年度科学研究費補助金(基盤研究(C))の研究成果を基に作成した。BFPTは,1)乳汁分泌に影響する基本的条件付け要因(5項目),2)乳房の形態的要因(3項目),3)母乳育児制限(心理・社会的)要因(13項目)の3領域,合計21項目から構成された。 回答の選択枝は,1)の基本的条件要因5項目と2)の乳房の形態的要因の3項目は,「あてはまる」を4点とし,「あてはまらない」を1点とした。3)の母乳育児制限要因13項目は,「あてはまる」を4点として,「ややあてはまる」を3点,「あまりあてはまらない」を2点,「あてはまらない」を1点とする4段階評価を用いた。 母乳育児制限(心理・社会的)要因(13項目)のCronbach'sαは0.81であり,下位尺度は0.58から0.83であった。BFPTの得点範囲は,21点から84点であり,得点が高いほど母乳育児継続を阻害する要因を有していることをあらわしている。 2.母乳育児予測ツール(BFPT)の検証(平成18年度) 作成したBFPTが,産後1カ月時の母乳育児継続をどの程度予測するのかを調査した。 調査方法は,産褥退院時の母親を対象に,BFPTを用いて調査を行い,同じ対象の産後1カ月時での母乳育児形態を調査した。 BFPSの得点範囲は,21点から84点の範囲にあり,本調査者の得点範囲は,23点から57点であった。全体の平均点は41.4±8.2であった。1カ月健診時母乳育児群の平均点は37.5±7.2,混合・人工乳育児群の平均点は46.1±6.7であり,両群には有意(p<0.0001)な差を認めた。 産褥1カ月時に混合・人工乳育児が予測されるCut off pointを42点以上と設定した場合,感度74.4%,特異度76.1%であった。 以上の結果より,BFPSは,産後1カ月までの母乳育児継続が困難な母親を,産褥退院時にスクリーニングすることが可能であり,個別的継続的な支援が行えるスケールである。
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