研究概要 |
本研究は,口唇口蓋裂児をもつ母親や家族が社会から受ける心的外傷とそれを乗り越えるための方策を検討することを目的とした。研究は,文献検討,口唇口蓋裂児を持つ母親18名・父親6名に聞き取り調査を行い,社会から受けた肯定的発言・否定的出来事・それを乗り越えた気持ちや対処行動についてKJ法にて分析,産科で出生前告知を受けた母親31名に質問紙調査を行い,行われた支援と母親の気持ちとの関連についてT検定を用い分析,の3部で構成した。 1.母親は,【健常児と変わらない】【気持ちを支える】【育児、治療を支える】【治る疾患】の内容を含んだ言葉や態度を肯定的発言と捉えていた。そして,【健常ではない子どもの出生】【産科入院中の不適切な対応】【療育に対する困難さ】【児の成長と共に起こる問題への困惑】【家族の無理解】【ソーシャルサポートのない状況】を否定的出来事と捉え,【母親の周囲に対する過剰な反応】【乗り越えられない思い】という,トラウマ後反応を持っていた。また,それを乗り越えた気持ちや対処行動は,【現状へのポジティブな捉え方】【ソーシャルサポートを受け入れる】【周囲に積極的な感情表出をはかる】【日々の育児を頑張る】【親子の育ち合いを実感】の5つであった。 2.父親は母親とほぼ同じ気持ちを持っていたが,心ない言葉や好奇の目に対する反応,言語発達に対する考え方,児の外貌に対する考え方に気持ちのズレがあった。 3.出生前告知された母親は,治療側の医療者との出生前の早期接触・治療説明により出産直後の再起の気持ちを高めていた。これらの結果から,医療者は,父親と母親の気持ちのズレを知り,児の療育環境が良好になるような家族ケアの実施と告知後早期に治療側の受診をすすめることが必要である。今回抽出されたカテゴリー(要素)は,口唇口蓋裂児の母親や家族がこの状況を乗り越えるための方策として重要である。
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