研究概要 |
【目的】介護支援専門員が高齢者虐待事例のケアマネジメント初期において,認識するケアマネジメントの困難さとその要因を明らかにする。 【方法】質的帰納的因子探索型の記述的研究方法を用いた。対象は高齢者虐待事例を担当経験のある,居宅介護支援事業所勤務の介護支援専門員である。職種による困難さを考慮し介護職を対象とした。研究者が非構造化面接を実施し,逐語録をデータとして分析に用'いた。分析では虐待の状況や対応の困難さ,考え方などに焦点を当て,データをコード化し,類似するデータの概念を検討しながらカテゴリー化した。介護者・要介護者と介護支援専門員の関係に焦点をあて,継続比較分析を行った。金沢大学医学系研究科医の倫理委員会の承認を得た。 【結果】介護支援専門員21名から,ケアマネジメントに関する困難さ,虐待家族への介入に関する困難さが抽出された。ケアマネジメントの困難さに関しては,‘被害者がおかれた悲惨な状況を放置できない',‘介護保険のサービスを使うことだけがこの人たちへできる援助'と,‘虐待者である介護者に契約を解除する権限がある'という認識があった。また,‘介入すると虐待が悪化する心配がある',‘被害者より加害者への対応を優先せざるをえない',‘虐待者である介護者が要介護者のニーズを決定'があり,帰結は,‘介護者が受け入れるケアプランを作成せざるをえない'であった。以上から"虐待者である介護者による潜在的なケアマネジメントの支配"という中核カテゴリーが抽出された。虐待家族への介入に関しては,介護者である‘虐待者と対時することが怖い',‘虐待者との間に心理的な壁が存在する'という認識があった。また,‘虐待者である介護者との関係を維持しなければならない'役割の一方で,介護支援専門員の介入で‘家族関係に波風を立てたくない'と認識していた。そして,‘虐待の根底にある家族関係への介入には至れない',‘虐待家族にも家族の絆はあると信じたい'という認識があった。以上から,"介護支援専門員の理念ではたちうち出来ない虐待者への無力感"という中核カテゴリーが抽出された。
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