研究概要 |
1.排便障害の要因を分析し,排便を促進する看護ケアプログラムの作成 介護老人保健施設入所者で,下剤を内服し泥状便などの軟化した便を排出している高齢者を対象に,排便パターンを把握することとその排便パターンに影響する要因を明らかにした。対象者は41名。 その結果,下剤を調整し便の性状を有形に調整すること必要性が示唆された。さらに,便意がないこと座位保持能力が低いことによって,トイレでの排泄が行われていなかった。以上のことから,以下の看護ケアプログラムを作成した。排便状態,便意の有無自発的な腹圧の有無座位保持能力等のアセスメントに基づき,「食後のトイレ誘導」,「腹圧の促進」,そして「座位保持の安定」を行うこととした。また,便の移送を促進するために,「食物繊維の摂取」,「温罨法」,「腹部マッサージ」を実施した。排便障害のアセスメント期間,援助実施期間はそれぞれ4週間とした。 2.看護ケアプログラムの効果の検証 介護施設で生活する高齢者を対象に作成した看護ケアプログラムの効果を検証するために,介護老人保健施設入所者で,下剤を服用し下痢や便失禁がみられる高齢者で,座位保持が可能な者5名にプログラムを実施した。 その結果,アセスメント期間中,いずれの対象者も便失禁の状態で,オムツを使用していた。頻度は少ないが自発的に便意を訴えトイレに座る機会がある者が2名,全く座っていない者が3名であった。援助を実施した結果,トイレでの排便回数は全員が増加した。1名は,ほとんどトイレでの排便が可能になった。オムツへの失禁回数が減少した者が,2名であった。排便を目的とする座薬の使用回数が減少した者が,2名であった。便意や排便感覚の表出回数は全員が増加し,座位保持能力は4名に向上が認められた。さらに,自発的な発語がほとんど見られない高齢者に,排便に対する爽快感や満足感を表出する言動が確認できた。
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