研究概要 |
本研究は,認知症高齢者の介護者用コミュニケーション技法に関する教育プログラムを開発することを目的に実施した。その結果以下のことが明らかとなった。第一に,要介護高齢者の家族介護者のコミュニケーションスキルの使用認識について,23項目の自作の尺度によって測定した結果,「受容的会話の配慮」「発話の配慮」「根気強さ」の3因子によって説明できることが明らかとなった。特に,認知症高齢者の介護者は,3因子すべてにおいて認知症でない高齢者の介護者よりもスキルをより用いていることが示された。しかし,主観的使用認識と,第三者による客観的評定では,一致度が低い因子もみられたことから,コミュニケーションスキルの把握方法についてさらに検討が必である。第二に,認知症高齢者の介護者10人の認知症高齢者とコントロール群に対する会話時の音声をそれぞれ比較したところ,認知症高齢者との会話時の音声が若干高くなる傾向は見られたものの,有意差は認められなかった。第三に認知症高齢者の家族介護者と介護スタッフとのコミュニケーションスキルの使用認識に関する比較では,家族の介護者の方がスキルを意識する程度は低いものの,介護者の平均年齢が高いこと,疲労感が高いことなどを考慮するとそれほどの差ではないことが推察された。以上から,認知症高齢者の介護者のコミュニケーションを高めるための教育方法として,日々のコミュニケーション技法に対する使用認識およびその実際を介護者自身が客観的に把握でき,しかもその結果の分析には介護者自身の年齢や疲労感等の情報を加えつつ,介護者自身が自らのコミュニケーション行動を客観的に振り返るような内容を含んだプログラムの必要性が示唆された。
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