【研究目的】 薬物依存症者の語りを通して、薬物に依存しない生活を取り戻す上での困難な状況や対処の特徴を描き出し、薬物依存症からの回復過程における適切な援助について考察する。 【研究方法】半構造化インタビューによる質的研究 インタビュー参加者へのアクセス:薬物依存症回復支援施設のピア・スタッフに協力を求め、「薬物依存症の自助グループや回復プログラムに参加しながら地域で生活している人」を紹介してもらい、同意が得られた人11名(うち、女性4名)にインタビューを行った。インタビューは同意を得て録音し、逐語録を作成した。得られたデータは、コーディングを繰り返しながら帰納的に分析した。 【結果】 参加者11名のうち、今回の報告では、女性4名に焦点を当て、それぞれのライフストーリーを描き出した。4人とも、薬物使用によって、日常生活も社会生活も破綻していった体験があった。しかし、それは他者からの援助やセルフケアによって、変化していった。それぞれのストーリーは、次のような事柄に焦点が当てられた。Aさん「薬物を使う理由」、Bさん「クレイビング」。Cさん「自分にとっての一番の問題」、Dさん「共感や愛情」。 【考察】 薬物乱用は、「やめよう」として「やめる」のではなく、共感的で安心できる環境の中で、結果として「やめることができている」と考えらる。薬物乱用は、その人の「生き辛さ」と関連しており、薬物を「やめさせよう」とする援助ではなく、その人が薬物を乱用しなくても、「生き生活できる」人間関係や居場所が必要である。そのような環境の獲得とその人のセルフケア能力の向上は、相互関係にある。 【おわりに】 今回の報告では、女性4名のストーリーを参加者の許可を得て、詳細に描き出した。本研究の今後の課題としては、全てのデータを検討し、援助についてさらに考察を深める。
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