研究概要 |
習慣性飲酒者は高血圧の有病率が高く,飲酒は睡眠構築に影響する.平成17年度は,習慣性飲酒が夜間睡眠時の自律神経機能と血圧に及ぼず影響に明らかにするために成人男性37名を対象として調査を行った.自律神経機能は,心電図R-R間隔のデータをもとにパワースペクトル解析を行った.Ambulatory Blood Pressure Monitoringを行うとともに,睡眠時にはパルスオキシメーターを装着しOxygen desaturation index(ODI)を求めた.その結果,習慣性飲酒は用量依存性に夜間睡眠時の自律神経機能を抑制し睡眠時無呼吸とともに日中覚醒時の血圧上昇に関与することが示唆された. 平成18年度は急性のエタノール負荷が睡眠と睡眠中の心拍変動との関係に及ぼす影響について明らかにするために行った.対象者は健康な大学生10人とした,各被験者に純エタノール換算で0(contro1),0.5 (LD), L O(HD)g/体重(kg)のアルコール飲料を3週間間隔で摂取させて検査を行った.検査日にはボルター心電図を装着し通常の就床時刻の100分前に飲酒させ,8時間の終夜睡眠時ポリグラフ検査を行った.自律神経機能は,心電図R-R間隔のデータをもとにパワースペクトル解析を行った.その結果,急性のエタノール摂取は睡眠中の副交感神経活動を抑制し交感神経優位な状態をもたらしていた.睡眠構築は高容量のエタノール摂取により特に睡眠前半ではそれほど影響を受けていなかった.今回の結果よりエタノールは睡眠の休息としての側面に影響を及ぼすことが示唆される.この影響は習慣性の飲酒が関与する高血圧の病態生理を考える上で重要な因子の一つと推察された.
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