研究課題
基盤研究(C)
閉塞性無呼吸症候群(OSAS)は、日中の眠気が主症状として見られるが、眠気の訴えが全くないOSAS患者で、医師が驚くほどのApnea Indexや睡眠中の酸素飽和濃度低下が見られることも少なくない。この睡眠中の低酸素状態は脳機能低下を及ぼすと思われる。扁桃腺肥大によるOSASの子供では手術による治療後に学業成績の向上のみならず身体発達・運動能力発達が改善した例もある。しかし、どのような脳部位が障害を受けやすいのか、また治療後にその部位のperfusionが改善するのかについてはわかっていない。そこで、OSAS患者を対象にCPAP治療の前後で高次脳機能検査を行い、対応する局所脳血流変化の反応性をFunctional MRI(fMRI)によって評価した。これまでOSASの高次脳機能の低下は臨床家によって認められていたが、脳部位が活動する際の脳血流の反応性を検討することで客観的な観察と治療効果の評価が可能で、治療方法に進歩をもたらすと考えた。そこでOSASの高次脳機能の低下について神経心理学的検査を用いて明らかにし、fMRIを用いて脳血流の変化の反応を調べ、睡眠時低酸素状態との関連を探ることにより、脳部位が活動する際の脳血流の反応性を検討した。この研究では、睡眠時無呼吸症候群患者が自覚できない程度の覚醒度・注意力低下の検出を目的としているがこうした現象は呼吸停止によるO_2飽和度やCO_2濃度に対する感受性低下(MR値の変動の正常との差異)や、治療後の神経心理検査における脳機能向上と関連すると考えたが、プロトコール上CO_2濃度が経皮的にしかモニターできず時間的関連性を追及するには不十分であることや、心拍数はコントロールできないこと、神経心理学的検査では包括的な脳機能変化を測定するため、定量性と相関を求めるためには複数の検査を組み合わせた上でタスクの絞り込みを行う必要があることが今後の課題となった。しかしながら、将来的にfMRIや近赤外線分光法が臨床応用されるためには、こうした問題は普遍的に起こると考えられ、これに対する基礎研究は大変少ない。明らかな脳器質的障害に対する脳血流低下や言語や運動に関連するタスクによるMR値の変化を測定する研究では、臨床的観察からその意義を解釈することができるが、健常人が一定の条件下でどのような脳機能低下を引き起こすか予測するような研究では、fMRIによるMR値の変動が最も直接的な影響を及ぼす因子とそれとは独立して変化する因子を詳細に把握することが必須と思われ、さらなる検討が必要と思われた。現代社会においては、従来問題とされてこなかった「睡眠」が大きくクローズアップされている。睡眠時無呼吸症候群は、生産性低下・事故や成人病との関連から社会的に重要な疾患と位置づけられた。一方で、耳鼻科・精神科・歯科口腔外科を含めて集学的治療が必要とされる疾患であることが明らかになった。昨今の簡易測定器や終夜脳波(PSG)を行う施設の普及と経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)の性能向上は目覚しいものがある。これは病気の症状が出た時初めて病院で治療すればよいという従来の考え方から、日常生活の場において潜在的健康障害を治療するという新しい医療スタイルに貢献すると思われる。睡眠障害が他の身体疾患と大きく異なる点は、患者の自己申告があてにできないという特質にあり、治療研究が遅れてきた一因といえる。将来的に保険適応可能なレベルにまでfMRIや認知機能検査の精度・信頼性を向上させることは、「日常生活の場における治療」を支える科学的な指針として重要と思われる。
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