研究概要 |
廃棄バイオマスの液肥化に取り組む国内4カ所の自治体を対象にして,材料確保〜液肥製造〜販売〜農産物流通を対象にした比較を実施した。その結果,し尿を液肥化する自治体は人口カバー率が100%であるが,厨芥を材料とする場合は大幅に低下することが確認された。また,バイオガスシステムが普及しているドイツにおける社会的な成立条件の検討も実施した。その結果,循環経済法が制定され,環境税の導入による税制優遇措置が整備されるなどのインセンティブが強く作用し,同時に,農家,企業,学術研究機関が連携した研究協力体制が有効に機能していることが確認された。 廃棄バイオマスの資源化を事業化し地域住民への理解と協力を構築するための方法として,し尿の液肥化に取り組む福岡県築上町において学校教育プログラムの開発及び効果の検証を実施した。し尿液肥の効果を講義で学び,地元農産物を学校給食へ導入すると同時に,地元産の大豆を使用した味噌作り実習を行った結果,し尿液肥に関する認識が「偏見」から「町の自慢」へと変化した。また,生活面では,自分の健康を考えながら食材を選び,家庭で自分の手で調理するなどの食生活の変化が見られた。 液肥の土中での詳細な肥効を確認するために,厨芥を材料とした液肥製造装置及び完全閉鎖型の植物栽培装置を試作し,コマツナの栽培試験を実施して液肥に含まれるアンモニア態窒素の動態を調査した結果,液肥の散布タイミングを適正に実施することで肥効成分のロスを招くことなくコマツナ栽培が実施できることを確認した。これらの知見より,液肥を用いた環境負荷の少ない栽培技術の確立が示唆された。
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