研究概要 |
1.開発法学において文化(culture)は非形式的制度(informal rules)として捉えることができ,全社会に存在する制度の一部として,法律を中核とする形式的制度(formal rules)と緊張関係に立ちつつ,(1)社会における不確実性の削減と,(2)社会の固有性の維持という機能を果たしている。そして,法システムの両輪である権利体系と法の支配および両者の相互関係においても,文化の要素が無視できない。 2.権利体系の構築度を測る指標として,(1)土地権原の確定・登記,その他,民・商法上認められた実体法上の権利類型,(2)土地所有権ないし使用権の収用に対する損失補償の確実性と相当性,(3)自由競争を保障する競争法の整備状況,(4)農地改革・税制改革などによる再配分システムの整備状況を想定した場合,権利体系の構築度は,国により(ラオス,ミャンマー),各指標においてきわめて多様である。 3.法の支配の確立度を測る指標として,(1)民事手続(訴訟・執行・倒産手続)における私権の公平な裁判・執行・実現の確実性,(2)権力行使をコントロールする行政・立法・司法のプロセスの透明化,アクセスの確保,(3)市民社会を構成する非営利的・非国家的団体の制度の整備・実施状況を想定した場合,法の支配の確立度は,国により(ラオス,ミャンマー),各指標においてきわめて多様である。 4.権利体系の構築と法の支配の確立との相互関係について,両者は目的と手段の関係に立ちつつ,それらに影響を与えうる文化的要素=非形式的制度により,両者の関係の仕方および構築方法には多様なパターンが存在することから,一律のパターンを想定し,一度にフルセットの構築を求めることは妥当でない。
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