研究概要 |
婦人科系疾患や更年期症状など女性に特徴的な健康事象,またそれらに関わる保健ケア習慣に関するエビデンスの多くは,米国ナースヘルス研究(米国NHS)に代表される欧米の大規模疫学研究によって提供されてきた。しかし,本邦女性へのエビデンス応用においては,わが国と欧米でどのように危険因子の構造が異なるかを検討しておく必要がある。そこで,女性看護職を対象とした前向き大規模女性コホート研究で,生活保健習慣の変化や疾病発生を継続し調査するなど,同じ枠組みで研究実施している米国NHSと日本ナースヘルス研究(JNHS)の成果を,統合比較するような共同研究が行えるかを,本課題によって企画調査した。 両研究とも,医学的知識を有する女性看護職自身が記入する調査票によって,データ収集されてきた。そのため、まずJNHSデータでの,女性ホルモン利用(松村康弘ら),更年期女性の肥満度や生活習慣(李廷秀ら),年齢別累積疾病発生頻度(藤田利治ら)の検討から,危険因子や疾病発生の年齢別分布状況の把握や自記式調査の妥当性などを検討した。また,米国NHSとの比較可能な調査項目の検討のため,JNHS継続調査票の作成配布や新規対象参加者の募集依頼を,企画調査として実施した。 2005年8月には研究分担者らが渡米し,米国NHS関係者と調査項目など幅広い情報交換を行った。また,特に薬剤利用については,米国で開発された国際薬剤疫学会でのコホート研究の課題動向を調査した。女性に特徴的な女性ホルモン剤、更年期女性や医療従事者で利用されつつある選択的セレトニン再取込み阻害薬など抗うつ薬,インフルエンザ・ワクチンや抗ウイルス薬の利用など,今後の日米共同研究の企画課題について情報収集を行った。以上のことから,来年度から,日米のナースヘルス研究の結果を統合分析し,女性における保健ケアのエビデンスを比較する共同研究を計画実施することができた。
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