研究概要 |
豊かで,快適で,便利で,安全で,活力のある社会の持続的発展に力強く対応し,社会情勢の変化に柔軟に順応できる技術開発の仕組みの構築が望まれている.特に,循環型社会形成を目標として,中・長期的視点のもと,既存の環境保全,自然との共生および新たな環境創造の各種技術が21世紀の研究のキーワードでもある.このような社会的要請のもと,建設分野においては,低環境負荷型社会基盤施設の開発ならびに建設リサイクルの推進が緊急課題であり,(1)既設構造物の健全性評価および延命化技術,(2)老朽構造物の解体施工技術,(3)建設廃棄物の再資源化技術,(4)社会基盤施設のライフサイクルにおける環境負荷評価に対する取り組みが精力的に行われている. 本調査研究では,設計寿命が100年に及び,設計段階から予測が困難な社会情勢変化にも十分対応できるよう,橋梁の構造諸元の変更が容易に可能な構造形態・その設計法について調査するとともに,このような設計サイクルにおける橋梁構造物の長期的資産評価法について議論し,工学と社会科学の複合・総合領域として将来の特定領域の新規発足に向けて事前調査を行うことを目的として実施した. 具体的には,道路資産を管理する国・地方の建設局,道路関連公団の橋梁設計技術者を研究協力者として招聘し,維持管理および資産管理に関する現状認識を把握するためのヒアリングを実施した.建設リサイクル法が施工され,建設廃棄物の適切な処理に対する配慮はなされるようになったものの,材料リサイクル・部材のリユースによって老朽橋梁から新設橋梁を生み出す社会システムの構築には至っておらず,『材料リサイクル・構造リユース』を前提とした橋梁構造物の長期的資産評価は行われていないのが現状である.歴史的な建造物が多く残される北米・欧州の先進国においても,また,日本と同様に成長著しい東アジアの隣国である中国・韓国においても,材料リサイクル・部材リユースを視野に入れた社会基盤整備は行われていない.循環型社会構築に向けた法的諸問題,特に減価償却によらない資産評価法などを早急に確立する必要がある.
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