研究概要 |
ダイナミック動作の例として,空手手刀による板割りをとりあげ理論解析を行った.空手手刀による板割りでは,手刀が板にインパクトする瞬間の運動量変化が板に対する力積として作用し,板を破断する.まず,人間の空手手刀動作を参考に,小型ヒューマノイドロボットを用いて,様々な空手手刀動作を生成した.次に,ヒューマノイドロボットが腕を振り下ろす際に手先の持つ運動量に着目し,腕振り動作中に蓄積される運動量と手先速度を計測した.さらに,手刀が板に持つインパクトする瞬間の運動量を,手先等価質量と手先速度の積で近似し,その近似運動量が最大となるような動作を自動生成する手法を開発した.本手法では,まず手先が板にインパクトする瞬間の運動量が最大で,かつ転倒安定性を考え,全身の角運動量が最小となるような評価指標を設定し,最適化手法によりインパクトの瞬間の姿勢と速度を決定する.次に,インパクトの瞬間から微小時間前の姿勢を,時間軸を逆にたどりながら最適化問題を解き,初期姿勢まで逆方向にインパクト前の動作を決定していく.さらに,インパクトの瞬間の姿勢から最終姿勢まで順方向の最適化問題を解いていき,順方向にインパクト後の動作を決定する.一般的なマニピュレータの動作生成では,初期状態と最終状態を決定してから動作を生成するが,本手法ではインパクトの瞬間の運動から動作を生成するため,インパクトの瞬間の運動を実現するのに適した初期姿勢および最終姿勢が自動的に選択される.このようにして,転倒の危険を最小にしつつ,手先の運動量を最大にする空手動作を自動生成する手法を開発した.
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