研究課題
萌芽研究
大脳皮質の興奮性神経細胞は、大脳皮質内脳室帯にて生まれ、法線方向(脳表方向)に移動し、大脳皮質を構成する。この時、移動細胞は大きく形態を変化させる。すなわち、脳室帯内では双極性の形態をとり、移動途中の中間帯にて多極性へと細胞形態を変化させ、さらにその後極性を取り戻し双極性となり、さらには軸索、樹状突起を形成しながら移動、そして移動停止し、さらに複雑な形態へと成熟する。この一連の変化は大脳皮質形成、特に機能発現を担う脳内の適正な細胞配置にとり重要である。このダイナミックな形態制御に細胞膜上の脂質(フォスファチジルイノシトール3リン酸など)が関わると考え、これら脂質に結合するドメインであるPH (pleckstrin homology)ドメインを有する分子を探索し、その機能を解明することを目指し本研究を実施した。なお、単細胞生物において細胞膜上の脂質は極性形成・移動に重要な役割を担うとされ、また培養神経細胞において軸索の形成においても重要な役割を担うことが報告されている。PHドメインは親和性の高い脂質の種類ごとに幾つかに分類され、この親和性の違いが脂質の多様な種類、分布に対応し、複雑な形態形成、移動を担っていると我々は考えている。(結果と考察)PHドメインを持ち、フォスファチジルイノシトール3リン酸に非常に高い親和性をもつ分子を同定した。同分子が形成期の大脳皮質に発現することを観察した。この分子に対する抗体を作成し、その発現を検討したところ、脳室面と中間帯での発現を観察した。さらに、その分子をノックダウンしたところ、細胞形態と細胞移動に障害が生じることを観察した。さらに、細胞膜上の脂質の意義を明らかとするため、ラメリポディンおよびARNOのPH domainに蛍光蛋白を付し、移動細胞での発現動態を検討した。その結果、樹状突起を含む移動先端への集積を観察した。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
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