研究課題
萌芽研究
神経管の背腹軸に沿った細胞分化パターンの形成には背側からのBMPとWntシグナル、さらに腹側からのsonic hedgehogシグナルのバランスにより背側から腹側に渡って規則正しく細胞分化が調節されている。ニワトリ胚神経管の背腹軸に沿ってちょうど中間の位置に、発生過程の比較的早い段階に一過性に帯状にカドヘリン-7が発現される。カドヘリン-7の存在意義は全く不明であるため、HH stage11-15ニワトリ胚神経管に電気穿孔法によりその遺伝子を導入し強制発現を試みた。異所性カドヘリン-7を発現する細胞集団は大きな凝集塊を作り、その異所発現部位に依存して、脊髄の背腹軸の分化パターンが変化した。背側マーカーとしてPax7の発現パターンを調べると、Pax7発現領域の腹側下限とカドヘリン-7発現領域上限とは境界を形成している。正常コントロール側に比較して、異所性のカドヘリン-7が背側に発現されるとこの境界は背側に移動し、腹側に発現されると腹側に移動した。さらにPax7とカドヘリン-7の境界だけではなく、本来カドヘリン-7が発現する部位よりも遠く離れた脊髄背側に分化する抗Islet-1/2抗体陽性のdI3介在神経細胞数にも変化が見られた。Pax7やカドヘリン-7の発現が腹側にずれた場合は数が増加し、背側にずれた場合は減少した。ただしカドヘリン-7の異所発現が、本来の発現とは無関係な領域に生じた場合には何の変化も見られないことから、カドヘリン-7が正常に発現する領域において本来持っている活性が修飾されたのではないかと考えられた。これらの結果は、あたかも帯状に発現するカドヘリン-7(+)細胞が形態形成のオーガナイザー様の機能を果たしているように見え、単なる接着分子としての機能によるものではないと考えられた。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
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