研究概要 |
エレクトロスピニング法によるナノファイバー作製法を利用すると,極めて緻密な薄膜を作製することができる.この薄膜は細胞不透過性であるが酸素や栄養因子の透過性を持つという機能性を有していると期待される.そこで生体材料を用いてナノファイバー膜を作製し,さらにMEMS技術などを援用することにより,3次元構造を持つ生体組織再建用デバイスを開発するための基礎研究を行った. 1.ナノファイバー膜の試作 臨床応用可能な生体材料として,臨床応用されている生体吸収性材料のポリカプロラクトンを採用し,エレクトロスピニング法によってナノファイバー膜を製作した.作製条件を変化させて種々のナイファイパー膜の製造を行ない,適切な条件を見出した. 2.3次元構造を持つデバイスの試作 3次元的構造を持った細胞デバイスとして,水溶性繊維を利用した試作を行った.アルギン酸ナトリウム・カルシウムイオンハイドロゲルで水溶性繊維を作製した.繊維をポリカプロラクトンのナノファイバーで覆って溶出させることにより,管腔構造を持つナノファイバー膜を作製することができた.さらに細胞接着性を改善するためにゼラチンなどによるコーティングを行った. 3.MEMS技術の応用 MEMS技術の応用による3次元構造細胞デバイスの基礎実験として,幅と深さが0.5mmの溝を有するポリカプロラクトン膜の製作を行った.ステンレス鋼板を微細加工することによりオス型を作製し,ポリカプロラクトン膜を押し付けることにより形状付与した.この膜についてもゼラチンなどによるコーティングを行った. 4.デバイス膜上での細胞培養実験 作製された膜上で血管内皮由来のUV♀2細胞の培養実験を行ない評価を行った. コーティングなしの膜上での細胞増殖は遅く細胞接着性の問題と考えられた.コーティングされた膜上では細胞増殖が観察された.また管腔内や溝内に細胞を侵入させ培養を行った結果,管腔内および溝上での細胞の増殖を確認することが出来た.
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