研究概要 |
画像処理による歯槽骨吸収の計測及び定量化に関する一考察として,歯の周囲の歯槽骨吸収を3次元CT像から計測する手法を提案した.歯周ポケット深さの測定及び歯槽骨吸収量推定のための臨床的な手技であるプロービングに類似した,垂直的な計測を計算機上で仮想的に歯全周に対して行うことで,歯肉に阻害されずに直接歯槽骨吸収量を計測でき,かつ歯の隣接する位置においても計測が可能となった.こうした特徴は従来のプロービングでは成し得なかった利点であり,3次元画像の画像処理によって初めて可能となった.今後の歯槽骨吸収,またその主な原因である歯周病の診断,治療において大きく貢献するものである.また歯の周囲における歯槽骨吸収に加え,複数の歯根をもつ歯においては歯根の間の歯槽骨吸収を計測することも必要である.これまで根分岐部吸収の診査方法は2次元レントゲン像による観察と分岐部へのプローブの水平的な挿入が主であり,空間的な広がりを直接観察することは困難であった.そこで歯科用CT像を画像処理することによって根分岐部の吸収を計測,可視化し,対象歯及び歯根に対する根分岐部吸収の位置と分布を直感的に把握できる手法を開発した.これによって吸収の程度と位置の把握が容易となり,治療法決定に役立つと考えられる. ノイズ及びアーチファクトの多い歯科用CT像から効率よく歯顎部組織を抽出する手法についても検討した.比較的ノイズに頑健な動的輪郭法に,強いエッヂが隣接するという歯顎部CT像特有の問題に対処するようエッヂ方向を考慮したエネルギー関数を導入し,歯質領域抽出手法を構築した.ノイズや隣接エッヂの影響を低減した領域抽出が可能であった. これらの手法が対象とする歯周組織構造の大きさからも,十分な精度を実現するためには約0.1mmの解像度を持つ高精細歯科用CTは不可欠であった.
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