研究概要 |
高解像度(20Mhz)のトランスデューサーを用いて,妊娠初期の胎芽に対して子宮腔内超音波断層法を実施し,初期発生過程にある中枢神経系を観察した。対象は治療的な妊娠中絶を予定する妊娠初期の女性で,85名に実施した。全症例において,超音波検査の実施による異常な出血,絨毛腔・羊膜腔の破綻は認められず,胎児への影響は無視し得ると考えられた。また母体の異常な疼痛も認められず,安全に施行された。長期予後については,検査の後流産手術を施行したため解析不可であった。検査の成績では,85症例中5例でトランスデューサーとの位置関係上,胎芽頭部の観察ができなかったが,80例で,胎芽の頭部が明瞭に描出可能であり,脳胞と周囲の高輝度部分即ち脳実質の部分の判別が可能であった。胎芽の脳が描出可能であった症例中9例は,妊娠週数不一致で除外した。妊娠週数と胎芽頭臀長が一致した71例について,観察された胎芽の終脳・前脳・中脳・後脳の各脳実質部分の厚さを,計測し分析を行った。終脳・前脳・中脳・後脳の脳実質計測値と妊娠週数との関係について回帰分析を行った結果,それぞれ1次関数で回帰された。即ち脳実質は妊娠週数に比例した発育をすることが証明された(R^2:47.8%〜62.2%)。また,胎芽頭臀長についても同様にそれぞれ1次関数で回帰され,脳実質と頭磐長の発育は比例する事が証明された(R^2:52.3%〜58.3%)。それぞれの関係について基準範囲を決定した。
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