研究概要 |
平成17・18年度の2年間で、4歳〜10歳の定型発達児計223名(各年齢は約32名,男女半分づつ)のデータ収集を行った。このデータを基に月齢とデータ得点に有意な相関があった行為機能(Praxis)の発達を評価する13の下位検査(身体図式2検査、シークエンス記憶と運動3検査、両側統合4検査、構成能力2検査、口腔運動行為2検査)を完成した。19年度は28名のIQ85以上の軽度発達障害児(高機能広汎性発達障害(アスペルガー、高機能自閉症、自閉症スペクトラムを含む)15名、ADHD5名、LD4名であり、高機能広汎性発達障害とADHDの2つの診断があるもの4名)に開発した検査とK-ABC心理教育アセスメントバッテリーもしくはWISC-IIIを行い定型発達児とのデータを比較検討した。28名のうち、検査すべてを実施できた者は23名であった。対象となった軽度発達障害児の生活年齢と同年齢の定型発達児の平均得点から-1.0SD以下を問題ありの検査とした。軽度発達障害児で-1.0SD以下の割合が高い検査は、両側統合(定規検査82.1%、ひもまき89%)、シークエンス記憶(運動感覚71.4%)であった。13の下位検査のうち、7つの検査は60%以上の対象児が-1.0SD以下であった。これらの検査は軽度発達障害を判別する行為検査として使用できる可能性を示唆した。逆に構成能力は17.8%と低い結果となった。他の発達検査との相関は人物画とWISC-IIIの動作性IQ、シークエンス記憶(視覚)とK-ABCの手の動作に有意な相関(p<0.05)があったが、その他の検査とは相関が認められなかった。以上から、開発した検査は軽度発達障害児の評価として適切なものであり、既存の発達検査とは異なる作業療法の視点から評価できる可能性を示した。
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