研究概要 |
1.花崗岩の岩盤河床からなる,木曽川・寝覚ノ床の下刻速度を宇宙線生成放射性核種濃度の解析を用いて求めた.その結果,寝覚ノ床の平均下刻速度は1.7m/kyrと計算され,この地域の平均垂直変位量とほぼ同じオーダーであった.また,その下刻速度は一定ではなく,1.2万年まえから6千年までの前半で小さく,それ以降では大きくなる傾向が認められた.これらの結果についてば,「季刊地理学」に投稿中である. 2.宇宙線生成放射性核種を用いた手法が,如何に地形学,とくに侵食地形の解明に有効であるかについての解説論文を作成し,第四紀関係の雑誌「Quarternary Geochronology」に投稿し、受理され,印刷になった. 3.花崗岩の侵食速度との比較の意味で,石灰岩の溶解(侵食)速度に関する調査を行った.具体的には,以下のような調査をした.喜界島の海成段丘サンゴ礁が隆起して形成された喜界島の海成殺丘上には,津波によって運搬された巨礫が点在し,その巨礫の下部にはペデスタル(台座岩)が形成されている.このぺデスタルの高さは,段丘構成物質であるサンゴ石灰岩が離水後に溶解され残ったものと解された.そこで,ペデスタルの高さと離水後の経過時間とから,石灰岩地表面の低下速度を求めたところ,約200mm/kyrという値が得られた.この値は,従来の氷河の迷子石を載せるペデスタルから得られた地表面低下速度より一桁大きいことがわかった.この結果はEarth Suraface Processes and Landformsに投稿し,受理され,印刷された.
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