研究概要 |
平成18年4月5日,海洋調査船「なつしま」(JAMSTEC)NT06-06航海の際に,無人探査機ハイパードルフィンを用いて,相模湾初島沖深海底総合観測ステーション(水深1,175m)の海底ケーブルに,前年度に調整した長期型現場マンガン分析装置(GAMOS-IV)を接続し,初島沖冷湧水域における海底直上水中のMnの長期連続モニタリングを開始した。GAMOS-IVからの毎秒のリアルタイムMnデータは,深海底総合観測ステーションから海底ケーブルを経由してJAMSTEC初島陸上局へ伝送され,さらに1時間毎に蓄積されたデータがJAMSTEC横浜研究所に送信された。6月25日,「なつしま」NT06-12航海の際に,再びハイパードルフィンを用いてGAMOS-IVを観測ステーションから脱着して船上に回収した。この間GAMOS-IVは海底面で正常に作動し,81日間にわたる深海底での長期現場化学分析に初めて成功した。リアルタイムでの現場化学データ回収時間としては世界最長である。観測中ほぼ12時間毎にブランクと標準溶液を分析して,現場における分析感度の変化を正確に補正した。相模湾初島沖では,海底火山活動に伴うMn異常が知られていたが,今回得られた連続データにおいても,深部間隙水の湧出によると見られるMn濃度の複雑な時系列変動が明らかになった。海底設置から20日後に伊豆半島東方沖で発生した海底地震(M5.6)と同期してMn濃度に大きな異常が観測され,地震に伴う海底直上水の化学的変化がリアルタイムで検出された。これらの研究成果は日本海洋学会秋季大会(18年9月),JAMSTECしんかいシンポジウム(19年2月)で公表するとともに,国際シンポジウムUnderwater Technology 2007(19年4月)へ論文を提出した。
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